COLUMN

研修コラム

限られた研修予算で成果を出すには? 人材育成の課題が「解決しない」原因とアセスメントという選択

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研修予算は増えないのに、成果の説明はより厳しく求められる。「今年もこの研修を続けるべきか」を判断したいけれど、その根拠が手元にない――こうした状況に置かれている人事・研修担当者は少なくないのではないでしょうか。
厚生労働省が令和8年7月31日に公表した「令和7年度 能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は80.1%(前回より0.2ポイント上昇)にのぼりました。その一方で、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は54.4%(前回より0.5ポイント低下)。課題を抱える事業所が8割を超えているにもかかわらず、育成への投資は広がっていないという構図が見えてきます。

課題があることを理解していても、予算は限られている。その条件下でも成果を出している企業は、施策の量ではないところに手を入れています。本コラムでは、人材育成の課題が「認識されているのに解決されない」原因をひもときながら、限られた予算で成果を出すために何を見直すべきかを考えます。

課題は認識されている。それでも「8割」は動かない

まず押さえておきたいのは、80.1%という数字が突然悪化したものではないという点です。同調査で「何らかの問題がある」と回答する事業所の割合は、近年8割前後で高止まりしています。

では打ち手の側はどうでしょうか。計画的なOJTを正社員に対して実施した事業所は60.6%(前回より0.5ポイント低下)、教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%(前回より1.8ポイント低下)など、施策の広がりは足踏みもしくは後退しています。
ただし、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額は2.0万円(前回より0.5万円増加)と伸びました。限定的な“投資する企業”が支出額を増やしていて、それ以外の企業は、課題意識が共有されているのに実行が伴わない。人材育成への投資が二極化しつつある状況が読み取れます。

課題が解決しないまま残る3つの原因

認識されていても実行につながらない。そこには次の3つの原因があります。

1つ目は、課題の解像度が粗いまま止まっていることです。「管理職のマネジメント力が弱い」「若手に主体性がない」というレベルの粒度では、誰のどの能力をどこまで伸ばすのかが決まりません。結果として研修は抽象的になり、限られた予算が薄く広く配分されてしまいます。
2つ目は、現在地を確認する仕組みがないことです。同調査では、キャリアコンサルティングを行うしくみを正社員に対して導入している事業所は48.4%(前回より1.0ポイント低下)と半数を下回りました。個人の状態を把握し、対話する仕組みが広がっていないのが現状です。
3つ目は、成果が次の施策に活かされないことです。研修を受講した記録は残っても、能力がどう変わったかの記録が残らず、結果、前年踏襲で同じ研修を続けるか、効果を説明できないまま予算ごと削られるかの二択になり、改善のループが回りません。

課題、現在地、そして成果。いずれの原因も「計測できていない」ことに帰着します。予算に余裕がない状況では、図る仕組みの不在がそのまま成果の差となって現れます。

アセスメントを組み込むと、研修設計はどう変わるか

これらの原因を改善する手段のひとつがアセスメントです。ここで示すアセスメントとは、合否を判定する試験や、人事評価そのものではありません。演習などの場面を用意し、対象者が実際にどう行動するかを観察して、能力の発揮度合いを確認するものです。

これを研修と連携させると、研修前、研修後、そして次の施策の3つの場面が変化します。
研修前は、会社が求める能力要件に照らして対象者の現在地を把握することで、身につけるべきスキルを絞り込めます。これにより、予算を薄く広げず、必要な箇所に集中して投資する判断ができます。
研修後は、研修前と同一の指標で再確認することで対象者の変化を明確にできます。数値化もしやすく、成果を経営層に説明する言葉も具体化が楽になります。
さらにその結果を次の研修や登用・昇格、キャリア面談など未来の施策に渡していけば、人材開発のデータを長期的に蓄積し、変化を定量評価できるようになります。

始めるための3つの判断

とはいえ、全社的にアセスメントを導入するのはハードルが高いもの。次の3点を意識すれば、小さく始めて広げられます。

1点目は、対象を絞ること。まずは1階層/1部門から始め、運用の勘所をつかむところから始めましょう。
2点目は、指標を固定すること。測る能力要件を毎回変えては比較ができません。同じ指標で継続的に図ることが、組織の資産になります。
3点目は、続けられる運用を設計すること。人材育成の正しい評価・判断は、単発ではない継続的な測定によって成立します。予算はもちろん、業務バランスを鑑みた実施頻度や期間、能力要件を絞ったプランなど、無理のない形式を検討しましょう。

まとめ

人材育成の課題が「認識されているのに解決されない」原因は、課題解決のために実施する施策が正しく測られていないからです。
限られた予算の中で成果を出すには、現在地から将来を共通で測れる評価軸を作り、日々の業務や学習機会に合わせて測定し、そうして蓄積されるデータをさらに次の判断に活かす——そんな「サイクル」が無理なく回るよう設計することが重要です。

第一歩として、まずは一つの階層の現在地を測ってみるところから、検討してみてはいかがでしょうか。

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厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html

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